2026/01/30 17:24
冬のおまじない。
私が小学生だったころは昭和の終わり。雪は今よりも積もっていた気がします。家には薪ストーブがあって、その上では、夏にとった薬草を淹れたやかんが、いつも湯気を立てていました。
そのやかんから祖母さんに注いでもらった茶の味は、ハーブティーのようにスパイシーでも華やかでもありませんでした。ひなびた草の味でした。でもとても芯から温まる「ひなの味」で、うまかったのを思い出します。
ところで、園主の私、小学生のころ、おなかが弱くて、冬になるとよく腹がいたくなったんですよね。
そするといつも祖母さんが、「腹冷えたからだ」と、腹巻を出してきてをつけさせてくれたんです。そしたら不思議と、必ずすぐによくなったものです。
また、自室から、何やら根っこ付きの干からびた草をもってきて、熱湯を満たした湯呑にどぶ漬けにして、飲ませてくれました。それが、とんでもなく苦いのです。
「センブリ」という薬草で、我が家では腹痛止めの民間薬でした。これがまた、腹巻の上を行く、抜群の効き目だったんです。
それで、私、腹痛が怖くなくなったんです。むしろ、センブリ飲んで治るという、その効果を痛みの中で試すのが、なんだか楽しみみたいになったんですよね。
でも、なんであんなに効いたんだろう?と、いつも冬になると思い出すんです。たしかに温め効果や有効成分はあるんでしょうけど、でも、あんなにてき面に効いちゃいますか?ふつう。ただの腹巻と草ですよ。
科学的には効果のない薬でも、「これ効くから」って信じ込ませて飲ませると、ほんとに効いちゃう心身の現象があるみたいですね。プラシーボ効果っていうんですって。
これじゃないかなーと実は思っています。祖母さんのプラシーボ効果。「腹いてーよー」とさわぎたてる孫をおとなしくさせる騙しテクだったんじゃないかって。
思い出すと苦笑いがこみ上げるんですけど、でも心がじんわり温かくなってくるんですね。それは、祖母さんが、腹巻とセンブリに込めていた優しさとや思いやりを感じるからなんです。家族の痛みをやわらげたいという慈しみのおまじないみたいなもの。
どうして、当園が和ハーブのブレンドハーブティーをはじめたかというと、ここに原点があります。ハーブに込める「慈しみのおまじない」にこそ、わたしたちがつくるものの本質があって、いつもそのことを大事にしたいと思っています。
そして、ブレンドの味を決めるときは、奥底に、郷愁をふくんだ「ひなの味」を忍ばせようと工夫しています。その役目を白神山麓の和ハーブたちがになってくれています。
2026年豪雪。今は亡き、ばあさんの顔を思い出しながら製茶する日日です。
農園晴晴 園主

