2025/01/08 14:39

農園晴晴の自慢の天日干したくあんは、今季は、ゆっくりと漬かりあがりました。
樽から引き上げる「蔵出し」が本格化しました。

お日様と微生物の力を借りてつくる天然の味です。毎年、天候や微生物の機嫌によって、漬かり方も味わいも変わります。それがよくて作り続けています。例年はいぶりがっこもそうなんですが、樽に入れてから40日ぐらいで完成します。今年は50日以上すぎてやっと漬かりました。

市販されているたくあんの多くは「干してない」「発酵してない」商品が多いんですよ。
九州地方の大産地を視察したときは驚きました。土がついたままの大根がトラックで運ばれてきて、コンクリートのでかい水槽にドバーとおろされる。そこにドカドカと塩をふりかけて、クレーンで吊ったコンクリートの重しをかける。「塩おし」といいます。
塩おしは数回くりかえされるようです。その間に大根の土も落ちてしまうんですが、念のため、食品用の薬品の水槽にどぶ付けして消毒します。塩おしでシナシナになった大根は、一度塩分を抜かれ、再度、添加物いっぱいの調味液に「本漬け」されてできあがり。

そのダイナミックな光景と、効率的なようでなんか無駄なような工程に、あきれたのを覚えています。そして気が付いたんです。「たくあんって干さなくてもできるんだ」。さらに「これって発酵してないよね」と。昔ながら感いっぱいのひなびたデザインの袋にいれられた、「むりやりしなびれさせたたくあん」をスーパーで見ると、あわれさを感じるようになりました。

なので、当園は、むきになって「天日干し発酵たくあん」をつくり続けます。


当園の漬物は、天日干したくあんと、いぶりがっこが漬物の二本柱です。いぶりがっこの方が売れます。でも、園主が好きなのは天日干したくあんです。工程が単純で、天然の力をいっぱい借りているのがいい。その分、「人が楽しているじゃん」と思われるかもしれません。まあ、そうとも言えます・・・。11月の初冬の“最後の”日差し”をあびて、干しあがった大根は、すごく懐かしいような切ないような甘い香りがするんですね。とてもシンプルな豊かさをたたえた香り。ああ、農業やっててよかったと思える香り。この香りに取りつかれて、たくあんを始めたのです。

干し大根を商用でできるのは、たぶん、当園の八竜農場がある秋田県三種町がやや最北ではないかな、と思います。北国秋田にいながら、大根収穫の限られた期間、霜が降りにくくて、降雪もなく、ちょうどよい風が常に吹いているエリアです。地域では干し大根の生産者はどうも減っているようなんですが、干し大根の芳醇な香りと、発酵漬物を守っていくためにも、当園はがんばって続けていきたいと思っています。

園主